「今月のヒヤリハットの集計、まだ終わってないの……?」
月末になるたびに、職員が提出したヒヤリハット報告書を前に、ため息をついていませんか。
放課後等デイサービスでは、子どもたちの安全を守るためにヒヤリハットの収集は欠かせません。
しかし実際には、「報告書を書く時間がない」「集まった報告をまとめるだけで大変」「分析や再発防止まで手が回らない」と感じることもあるのではないでしょうか。
本来は事故防止に活かすための仕組みなのに、いつの間にか「報告を集めて集計すること」そのものが目的になってしまうこともあります。
そこで今回紹介するのが、Googleフォームとスプレッドシートを活用したヒヤリハット収集の仕組みです。
職員はスマホから数分で報告でき、回答は自動でスプレッドシートに蓄積。さらに月ごとのデータ整理も自動化できるため、管理者は集計作業に追われることなく、分析や再発防止に時間を使えるようになります。
追加費用をかけずに始められるので、まずは小さく業務改善を始めたい事業所にもおすすめです。
なぜ放課後デイのヒヤリハットは「紙」だと形骸化するのか?
「ヒヤリハット報告書、今週中に必ず提出してくださいね!」
児発管(児童発達支援管理責任者)や施設長がどれだけ声をかけても、なかなか集まらないヒヤリハット。たまに提出されたと思えば、「お友達とぶつかりそうになった。今後は気をつける」といった数行だけの報告書……。
心当たりはありませんか?
実は、ヒヤリハットが形骸化してしまう原因は、職員のやる気だけの問題ではありません。
「紙の報告書」という運用そのものが、忙しい放課後デイの現場とあまり相性が良くないのです。
まずは、現場の「書く側」と管理者の「集計する側」、それぞれの立場から見ていきましょう。
【職員の本音】とにかく忙しい!「あとで入力」は苦痛でしかない
放課後デイの現場では、送迎や見守りなどで常に子どもたちの安全に気を配っています。そのため、ヒヤリハットが発生しても、その場で報告書を書く余裕があるとは限りません。
紙の報告書はもちろん、Excelの様式に入力する運用であっても、多くは業務が落ち着いてから記録することになります。
しかし、いざ報告しようとすると、
「あれ?あのとき何時何分だったっけ?具体的にどう対応したっけ?」
と思い出すところから始まります。
さらに疲れている日は、
「もうヘトヘトだし、今回は報告しなくてもいいか……」
と思ってしまうこともあるでしょう。
もちろん、これは職員の意識の問題ではありません。忙しい業務のあとに報告書を作成すること自体が大きな負担だからです。
その結果、本来共有したかったヒヤリハットが報告されないまま終わってしまうことがあります。
【管理者の限界】集めたヒヤリハットを「活かすまで」が大変
一方で、苦労しているのは現場職員だけではありません。管理者にも別の負担があります。
ヒヤリハットは集めるだけでは意味がなく、集計や分析を行い、再発防止につなげていく必要があります。
しかし、紙の報告書であれば内容を確認してExcelへ入力し、Excelの様式で報告している場合でもデータをまとめ直す作業が発生します。
気が付けば、集計の準備だけでかなりの時間が過ぎてしまうことも少なくありません。
「データは集まったけど、どこでどんなヒヤリハットが多いのか分からない……」
そんな経験がある方もいるのではないでしょうか。
本来大切なのはデータを集めることではなく、そのデータから傾向を見つけて事故防止につなげることです。しかし、集計や整理に時間を取られてしまい、分析まで手が回らないケースも少なくありません。
ヒヤリハットをGoogleフォームで集める3つのメリット
紙やExcelでの運用には、それぞれ課題があります。
そこでおすすめなのが、Googleフォームを使ったヒヤリハット収集です。
Googleフォームを活用すると、次のようなメリットがあります。
① その場で報告できる
職員はスマホから簡単に入力できるため、送迎後や空き時間にその場で報告できます。
「あとで報告書を書こう」がなくなり、記憶が新しいうちに記録できるようになります。
② 集計作業の負担が減る
回答は自動でスプレッドシートに蓄積されるため、紙の報告書をExcelへ転記したり、複数のファイルをまとめたりする手間が減ります。
③ 小さなヒヤリハットも集まりやすくなる
報告のハードルが下がることで、これまで見過ごされていた小さな気づきも共有されやすくなります。
その結果、ヒヤリハットの件数だけでなく、事故防止に役立つ情報の質も高まります。
Googleフォームは無料で利用できるため、まずは大きなコストをかけずに始められるのも魅力です。
【サンプル公開】放課後デイ向けヒヤリハットフォーム
「Googleフォームが便利なのは分かったけれど、一から項目を作るのは大変そう……」
そう感じた方もいるかもしれません。
そこで今回は、私が放課後デイ向けに作成したサンプルフォームを紹介します。
まずは、現場の職員が入力しやすく、管理者も後から集計・分析しやすいように考えた基本項目を見ていきましょう。
現場の負担を減らすヒヤリハットフォームの基本10項目
今回のサンプルフォームは、現場の負担を減らせるよう、スマホから数分で入力できる項目数に絞っています。
項目を増やせば詳しい情報は集められますが、その分入力の負担も大きくなります。
そこで今回は、集計や分析に必要な情報を押さえつつ、無理なく続けられるよう10項目に絞りました。
| 項目名 | 入力形式 | 必須/任意 | 設計の狙い |
|---|---|---|---|
| 発生日 | 日付選択 | 必須 | 月別・曜日別の分析に活用するため |
| 発生時刻 | 時刻入力 | 必須 | ヒヤリハットが起きやすい時間帯の分析に活用するため |
| 発生場所 | プルダウン | 必須 | 発生場所ごとの傾向分析に活用するため |
| 発生場面 | プルダウン | 必須 | ヒヤリハットが起きやすい場面の分析に活用するため |
| 対象児童 | 記述式(短文) | 任意 | 必要に応じて事例を振り返るため |
| 対応職員 | プルダウン | 必須 | 後から状況を確認するため |
| トラブルの種類 | チェックボックス | 必須 | ヒヤリハットの種類別分析に活用するため (複数選択可) |
| 発生時の状況 | 記述式(長文) | 必須 | 発生時の事実を記録するため |
| その場の対応 | 記述式(長文) | 必須 | 実際の対応内容を記録するため |
| 要因の分析 | 記述式(長文) | 任意 | 再発防止の検討に役立てるため |
サンプルフォームをコピーする
ここまで紹介した10項目を設定したサンプルフォームを用意しました。
以下のボタンをクリックすると、ご自身のGoogleドライブにコピーして利用できます。
必要に応じて項目の追加や変更もできるので、事業所の運用に合わせて調整してみてください。
※別タブで開きます
コピーした後は、以下の3点だけ事業所の運用に合わせて調整してください。
①「対応職員」を自社の職員名に変更する
テンプレートの「対応職員」のプルダウンには、サンプルとして「職員A」「職員B」などの名前が登録されています。
ここを、実際に勤務している職員名(苗字のみでもOK)に変更してください。
② 選択肢を自社の運用に合わせて調整する
施設の環境や送迎ルートによって、ヒヤリハットが発生しやすい場所や場面は異なります。
必要に応じて、「発生場所」や「発生場面」の選択肢を事業所の実態に合わせて変更してみてください。
③「トラブルの種類」を自社に合わせて調整する
テンプレートには一般的なヒヤリハットの分類を登録していますが、事業所によって発生しやすい内容は異なります。
運用を始める前に、自分の事業所で把握したい内容や分析したい内容に合わせて、選択肢を追加・変更してください。
10項目でも多いと感じる施設へ
「うちの施設は人手不足で、10項目も入力してもらうのはハードルが高い…」
「まずはスタッフにスマホ入力の習慣をつけてもらうところから始めたい!」
そんな場合は、項目をもっと絞ってスタートしても問題ありません。
まずは、以下の「基本となる5項目」だけでも十分です。
- 発生日(いつ)
→ 月別・曜日別の集計に必要 - 発生時刻(何時に)
→ 時間帯別の傾向を把握するために必要 - 対象の児童名(だれが)
→ 個人ごとの傾向を確認するために必要 - トラブルの種類(なにが)
→ 複数選択で登録しておくと、後から種類別の集計がしやすくなります - 発生時の状況とその場の対応(どうなった)
→ 状況と対応を1つの項目にまとめることで、入力の負担を減らせます
まずはこの5項目から始めて、現場がスマホ入力に慣れてきたら、「発生場所」や「要因」などの項目を少しずつ追加していく方法がおすすめです。
まとめ
今回は、放課後デイのヒヤリハット管理が形骸化しやすい理由と、その解決策としてGoogleフォームを活用した収集の仕組みを紹介しました。
ポイントを振り返ると、
- 紙やExcel中心の運用では、職員・管理者の双方に負担がかかりやすい
- Googleフォームを活用することで、報告やデータ収集を効率化できる
- 入力しやすく、後から集計しやすい項目設計が継続運用のポイント
という3点です。
これで、現場からヒヤリハットを集めるための土台は完成です。
次回は、Googleフォームに集まったヒヤリハットデータをGoogleスプレッドシートとExcelに連携し、今後の集計や分析に活用できる仕組みを作っていきます。
